Vol.19
2 May 1998

税金不払い運動

 3月のある日プロジェクトにお客さんがあり、マサンダレ村へ案内して村の様子やプロジェクトとの関係について話を聞いてもらいました。お客さんが先に帰り、残った僕らは村長さんと仕事の話をしていました。その話も一段落付いたらお喋りです。タンザニアでは用だけ済ませてさっさと帰る、なんていうのは無粋だと思われますから。

 もっともお喋りといってもスワヒリ語ですから、僕は同僚に英訳してもらわないと把握できません。ですから今から書く話も、同僚が訳してくれた話です。あるいは訳してくれた彼の省略や、脚色が混じっているかもしれません。

 村長さんが僕らに話してくれたのはサメ県当局から脅されている、ということでした。僕は初めて知りましたが、なんでも牛一頭当たりいくら、というような牛頭税?があるのだそうです。それをマサンダレ村の村民は滞納しており、サメ県当局は、もし税金を払わないならば軍を連れて牛を没収に来る、と言っているのだそうです。さて会話です。

 「県の奴等が来たって牛は見つからんよ。それまでに村中みんなで牛を連れてケニアに逃げちまうから。」

 「えっ、村長、タンザニアを見捨てちゃうのかい?あんたの国だろう?」

 「何が国だい。わしらに何かしてくれたかい?小学校を作ってくれってずっと言ってるのに何にもしてくれねえ。水タンクを作ってくれってずっと言ってるのに何にもしてくれねえ。今まで税金を取るだけ取っておいて何にもしてくれやしねえ。そんな国に未練はねえよ。」

 まあ確かにタンザニアの国家財政は、公務員の給料を支払ったらほとんどおしまい、みたいなものですから、税金を払っても見返りなんかほとんど期待できません。僕の同僚のマクパ氏はもちろん国家公務員ですが、まるで他人事のように話を聞いているのがまたタンザニアらしいといえばタンザニアらしいところです。政府の悪口を平気で言ってくれるほど信頼関係ができている、ということでもありますが、政府に協力している僕としても苦笑せざるをえない話でした。

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