Vol.20
25 June 1998

人と動物

 日本人にとってアフリカの野生動物は憧れの的、サファリに行って彼らの悠然とした姿を見ると畏敬すら感じるくらいです。でもこれが地元の人たちにとってどうか、というと随分違うようです。

 スワヒリ語で動物のことをwanyamaと言います。nyamaというのが「肉」のことで、それに生物を表す接頭辞であるwaがついています。つまり動物は「生きている肉」なわけですが、確かに地元の人たちを見ているとそうした面が強いです。

 僕らの職場の周囲には天然のサバンナ林(と言っても二次林ですが)があり、小型のカモシカ類やサル、小型の肉食獣もいるようです。ライオンが目撃されたこともありますが、定住はしていないようです。

 この中で最もよく目に付くのは文句無しにサルですが、次がカモシカたちです。さてこのカモシカ、僕らには愛らしい動物、と目に映りますが、こちらの人たちにはどうも「肉」としか認識できないようなのです。見つけ次第殺して食べてしまいます。本当は狩猟には政府の許可が要りますが、誰もそんなことを気にしてはいません。

 他の動物たちはどうかと言うと、どうやら「敵」という認識のようです。サルなどは確かに畑を荒らしてしまいますから理解できるのですが、肉食獣は小型でも危険なものと思われているらしく、やはり見つけ次第殺してしまいます。以前サーバルキャットが交通事故にあって死んでいた話を書きましたが、その話をプロジェクトでしたところ、驚いたことに、「ああ、その動物ならプロジェクトの敷地内に入ってきたので、みんなで追いつめて殺した。」というコメントが返ってきたことでした。

 聞いてみると「みんなヒョウの子供だと思った」そうですが、どうやらヒョウを見たことのある人など誰もいません。危険だというイメージだけで殺してしまったようです。

 ヘビとなるともっと悲惨です。毒蛇であろうと無かろうと、ヘビである限りは即座に叩き殺されます。無論、コブラをはじめ、まるでツチノコそっくりの体型をした強烈な毒を持つものから、家の周りによく出没し、小型だけどやはり強い毒を持つグリーンスネークなどもいます。とにかく毒蛇の種類が多いですから、日本のように「これはマムシ、これはシマヘビ」なんて区別してはいられないでしょう。でもヘビを殺しまくっておいて「ネズミが増えて困る」なんてことも言っているのですから、ちょっと矛盾してますね。

 さてもっと面白いのがカメレオンに対する反応です。どうやら東アフリカ一帯で共通しているようなのですが、カメレオンは触れてはいけない、タブーに属する動物のようです。民族によってはカメレオンを見ることが不吉だとされているようです。日本人にとってはカメレオンはとても愉快でかわいい生き物です。平気で捕まえて飼ったりしていますが、これはタンザニアの人たちには到底理解できないようです。日本では爬虫類のペットがブームだ、なんて言ったら多くのタンザニア人は卒倒してしまうでしょう。

camelon
この写真は角が3本あるカメレオンです。角が無いものや、一本だけのものもいます。
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