Vol.12
10 May 1997

財政危機

 金欠病に罹ってしまいました。なんて言うと「えっ!いい給料貰ってるんじゃないの?」と言われてしまいそうです。はい、確かに悪くない給料を貰っています。でも皆さん同様?金欠病に罹る時は罹るものです。実は飲む、打つ、買う、に手を出してしまい…なわけはありません。すべて銀行のせいです。

 僕らの給料は一旦ニューヨークの銀行口座へ振り込まれます。タンザニアの銀行はリスクが大きいのが理由です。そしてアメリカの銀行の小切手を自分あてに切り、タンザニアの銀行に必要額だけ預金します。これを引き出して使う訳ですが、小切手を切ってから、入金されるまで通常約3週間かかります。

 ところが今回はこれが3週間で済みませんでした。3月11日に小切手を切り、ちょうど1ヶ月後、手持ちがほぼ底を突き、銀行に行きました。残高を確認すると、まだ入金になっていません。たまに1ヶ月以上かかる時もあるので、さらに1週間後行ってみてもまだ入っていません。

「一体どうなってるんだ?」

と聞いてみると、

「アメリカから4月30日に送金するという通知が来ている」

と、書類を見せてくれました。

「5月に入ればおろせるだろう」

って、ほとんど2ヶ月じゃないですか。調べてみるとアメリカの口座からは3月23日に小切手が引き落とされているし、アメリカを出るまでにかかっている1ヶ月以上の時間は一体何なんでしょうか?


 悪い時には悪い事が重なる物?で、4月28日に電話代と電気代の請求が来てしまいました。電話代は1月分の請求で、3月23日迄に払え、と書いてあります。ところが請求書の投函日は4月23日です。「まいったなあ」と思って4月29日仕事から帰ってくると、しっかり電話が切られていました。料金滞納が切られた理由ですが、請求書を一ヶ月以上遅れて送っておいて、受取ってから一日支払わなかっただけで切られてしまったのですからかないません。

 加えて4月30日は月末で給料日。メイドのフェリスタおばさんと庭師のジョセフに給料を払わなくてはいけません。朝残り少なくなった手持ちの現金を数え、

「トホホ給料を払うと週末に食料が買えない。こりゃ借金しなきゃいけないかなあ」

なんて情けない気持ちになっていたら、追い討ちをかけるように突然電気が切れました。もちろん電気代も未払いですから、

「ああついに電気まで切られちゃった。」

なんて思っていました。

 電気の無い生活はネパールなどでしたことがあり、さほど大変だとは思わないのですが、何しろ今住んでいる家は、水も一旦ポンプで二階よりも高いタンクに揚げてからでないと使えません。シャワーも浴びられなければトイレも流せません。とりあえず節水モードに入りましたが、翌5月1日の夜になって電気が来ました。幸い未払いのためではなく、うちの周辺だけに限られたトラブルだったようです。


 5月1日はメーデーで祝日、勝負は2日でした。まず朝一番に銀行へ行きました。案の定

「まだ入ってません。」

と言う予想した答に対し、

「3月11日のデポジットだよ、どうなってるの?」

と食い下がりました。係の女性は

「えっ、3月!」

とちょっと驚いた様子でボスに話しに行きました。その結果

「今日中に入金手続きをしますから、お金を下ろしてもらって結構です。」

そう来なくちゃ。


 さてお金を握り締めて次は電話局。

「1月分が未払いですねえ。再接続するには手数料をいただきます。」

「手数料!ちょっとこの請求書の消印を見てよ。4月23日でしょ?どうやって期限迄に払えって言うの?」

「ちょっと待っててください。」

とまたまたボスの所へ相談に行ったかと思うと、

「手数料はいりません。すぐ繋ぎます。」

 5月2日、完全勝利の日になりました。

タンザナイト copyright© Since 1996 Hitonomori Co. Ltd.