Vol.12
10 May 1997

南半球の時計は左に回る

 かなり前に北半球で見る三日月と南半球のものとは顔の向きが違う、という話を書きました。今回は南半球の時計は左に回る!!話をしてみようと思います。

 英語では右巻きや右回りを時計回り(clockwise)、左巻きや左回りを反時計回り(counterclockwise)、と言います。普通rightとかleftとかは言いません。rightとleftは平面上で正面が決まっているものに対しての左右を表すのに使われますから、回転の場合どこを基準にして左右か言えないのでrightとleftは使わないのだと思っていました。

 先日ダルエスサラームに出張してホテルに入った時の事、部屋まで荷物を持って来てくれたボーイさんが、鍵を開けるのにてこずっている僕に

「leftに回してください」

と言いました。

「へー、counterclockwiseじゃないんだ」

と思い、その次に脳裏に浮かんだのが

「英語では時計が無かった時代に右回り左回りをどう言ったんだろう?」

という疑問でした。

「では時計ができたのはいつだろう?」

中世でしょうか?良く知りません。

 でも、ふと気付いたのは、機械式の時計ができる前、そして砂時計や水時計も無かった時代のことです。一番古い時計はやはり日時計だったのではないでしょうか?イギリスはかなり高い緯度にあります。ですから太陽は常に南の空を低く通過します。もちろん太陽は東から西に動きます。地面に日時計用の棒を立てると

「!!!」

やっぱり影は時計回りではないですか!人類がドアのノブみたいに回転する装置を作り出したのと、日時計とを比べてどちらが古いかと考えると、ストーンヘンジがあることからも、日時計の方が古いような気がします。とすれば、「時計回り」は人類が回転するものを作り出すより早くからあった言い回しかもしれません。

 ここでまた考えました。

「南半球では日時計はどっち回りなんだろう?」

 太陽は北の空にあります。でも東から西への移動は北半球と変わりません。地面に棒を刺すとそう、動きは反時計回り、つまり左回りです。もし南半球で機械式の時計が発明されていたとしたら、今の時計は全部反時計回りに廻っていたことでしょう。

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