Vol.13
22 July 1997

タンザニアへの帰還

 休暇一時帰国を終え、7月15日キリマンジャロ空港へと入りました。KLM オランダ航空を使いましたが、なんとアムステルダムを出る直前、

「申し訳ありませんが、機内食が足りないため今から積み込みを行います。」

 のアナウンス。

 これで出発は2時間遅れました。機内にはサバンナにいる時そのままのマサイ族の一団が乗っており、驚いたことに、牛を追う時の棒まで手にしています。雰囲気は離陸前から早くもタンザニア。

キリマンジャロ空港。
飛行機はキリン印のタンザニア航空

 キリマンジャロ空港には予定より1時間半ほど遅く、夜9時半ころに到着しました。入国審査もスムーズに終わり、預けてあった荷物も驚くほど速く出てきて税関審査へと向かいました。

 いつもなら何も言わずに通してくれるのですが、運悪く生真面目な係員に引っかかり、荷物を開けされられてしまいました。そうなるとやばく、買い込んできたフィルム・スキャナーが見つかってしまいました。こうした機械類は課税対象です。その上さらに手持ちの鞄まで開けさせられ、コンピュータも見つかってしまいました。係官は

 「ではあちらの税関の部屋へ。」

と冷たく言います。

 さてこの二つ、課税されたらうん万円ではすみません。

 「やばいなあ。」

 税関の部屋に入りとにかく言い訳をと、

 「これはタンザニアで前から仕事に使っているコンピュータで、輸入するわけではない。」


と言うと、税関のボスは、

 「それならタンザニアから持ち出した時の申告書を見せろ。」

と言います。でもそんなものはありません。そこでいちかばちかの賭けに出ることにしました。

 「よし、それなら証拠を見せてやろう。」

と、コンピュータのスイッチを入れました。そしてワープロのファイルを一つ開きました。それは僕が仕事で書いている林業普及マニュアルです。無論英語なので彼にも読めます。タイトルは「サメにおける林業普及マニュアル」です。

 「どうだ?あんたはサメの話を僕が日本で書いたと思う?」

と言うと、

 「いや思わない。行ってもいいよ。」

と関税を払わないまま通してくれました。途上国の良いところはこんな風に融通が利くことです。

 空港の外に出て思わずにんまり。してやったりです。だってフィルム・スキャナーは日本で買ってきた新品ですから、本来逃れるすべはないのです。コンピュータとセットだと思ってくれたので、お咎めなしで済みました。

 さて迎えの車に乗ってモシに戻ると家にちゃんと電気は点いています。ニコニコ顔で迎えてくれたジョセフに

 「水は?」


と聞くと

 「大丈夫。」

と答えます。よし、これで生活には困りません。家に入り次は電話です。受話器を取ってみるとツーツーという話し中のような音。これは電話局の中で接続を切っている音です。この音がしていれば大丈夫。未納の料金と手数料さえ払えばすぐ繋いでもらえます。

 「うんうんすべて順調だぞ。」

 さて翌日は食料の買い出しや公共料金の支払いなど、溜まった雑用を片づけていました。午後になって二階に上がりかけたフェリスタおばさんが、素っ頓狂な声を上げました。悪い予感。見てみると、二階から階段を水が流れてきています。調べてみると二階のトイレのタンクの水が止まらなくなって溢れていました。

 「そうだよな。一ヶ月以上も留守にしていて何もトラブルがないはずがないよな。」


と、妙に納得してしまいました。

 さて翌日、大家さんのお兄さんがやって来ました。彼が来る時は何か問題がある時、と大体決まっています。

 「日本はどうだった?」

という挨拶が一通り済んだ後で彼が切り出したのは、

 「あんたの留守に漏電でブレーカーが壊れてな。今電線を直結してあるんだ。」

 「わかった。それで修理費はいくら?」


 何事もないはずはないと思っていましたが、こんなにいろいろ出て来るとは…。

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