Vol.13
22 July 1997

番外ギリシャ編

 この記事を書き始めたのはギリシャ・アテネのホテルです。国立の考古学博物館からそれほど遠くない、ホテルの一室です。

 僕はフォレスターの他になりたいものがいくつかあります。アイドル歌手はさすがにもう無理ですが、生物学者と考古学者です。

 考古学は大好きで、今までにもエジプトのピラミッド、メキシコのティオティワカン、ローマとポンペイ、ホンジュラスのコパン、ペルーのマチュピチュ、インドのアジャンター・エローラや、その外にもボリビア、ケニア、グアテマラ、タイ、ミャンマー、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、スリランカなどで遺跡を訪れています。

 遺跡や、そこからの出土品を見ていると、その理不尽な巨大さや、機能的でないデザインを創り出した、王様や貴族や庶民や兵士や奴隷たちがなんとなくイメージの中に蘇ってくるのです。だから僕にとってギリシャは外せない場所でした。

 アムステルダムの空港で、Lonely Planetというガイドブックのギリシャ編を買いました。このシリーズ、地球の歩き方の英語版みたいですが、はるかに詳しく、はるかに正確で、はるかに客観的な記述があるので、僕は愛用しています。地球の歩き方を執筆したことのある僕が言うのだから間違いありません。

 この本を見てみると、当たり前ですがギリシャは広く、短期間で本格的にこの遺跡だらけのギリシャに浸るほどのことはできません。今回も今までと同様、日本への帰り道にちょっと立ち寄ることが許されるだけです。アテネと日帰り圏内だけですが、しばしのタイム・スリップを楽しみました。

 まず感じたのは有名なアクロポリスの高さです。上野駅から見上げる上野の山程度を想像していたら、トンでもありませんでした。なんて書いたら西郷どんと一緒にするなんて!とパルテノン(左の写真)の主、アテナイ女神様の罰があたりそうです。

 でも僕が言いたいのは心理的な高さ、とでも言うのでしょうか。例えば比叡山は聖地であり、京都から見上げる山は、アテネ市内から見るアクロポリスよりずっと高いものです。でもどこか人臭さ、柔らかさを感じさせる日本の聖地とは違い、アクロポリスは人間世界とは隔絶した世界を作っています。それはローマとも違い、神々が厳然と神々であったことを感じさせます。

 右の写真の場所はデルフィ(デルファイと読むこともある)という有名な遺跡です。神の御告げを告げるオラクルという施設があった場所です。

 デルフィは岩山の斜面にある、美しい場所です。実はデルフィという名前は、僕が使っているプログラミングソフトのタイトルでもあります(そう、僕はプログラムも作っちゃうんです)。現代的なコンピュータ関連にギリシャ神話に出てくる地名をつけるなんて、ちょっとしゃれています。閑話休題。

 ミケーネにも行きました。トロイを発掘したシュリーマンが、トロイを攻めた都市国家ミケーネの跡を発見した場所です。有名なライオンの門(左の写真)は思ったより小さかったのですが、でも3千年近い昔に、アガメムノンやヘレンが石畳の坂を踏み、この門をくぐっていた事を考えると時間のスケールが狂ってしまうようで、頭がくらくらして来ました。ギリシャの歴史を詳しく解説できるほど僕も詳しくはないですが、いわゆるギリシャ文明が栄える以前の文明の跡です。

 ギリシャといえばもう一つ忘れていけないのが、エーゲ海。今回は短い滞在でチャンスがありませんでした。でもアテネから日帰りで行ける三つの島を一巡するクルーズには行きました。

 驚いたのは、アテネにこんなに近い場所なのに、海が真っ青で、よく写真で見る色だったのです。島の上に立つ家はこれもまた真っ白のものが多く、息を呑むようなコントラストです。ぜひ一度訪れてみてください。

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