Vol.18
15 March 1998

私待つわ♪

 途上国の多くでは、政府での事務処理や、お店などの店員の対応が遅いことはよく知られていると思います。タンザニアも無論例外ではなく、きびきびと処理してくれる所の方が少ないと言って良いでしょう。

 僕は昨年末任期延長のためにパスポートを更新しました。僕らが持っているパスポートは旅行者とは違い公用旅券で、有効期限は任期の分しかありません。パスポートを更新してからビザの更新をしてもらおうとイミグレーション・オフィスに行きました。

 書類を揃えて提出し、10分ほど待っていると、係のおばちゃんが「やっておくから明日取りに来て。」と言います。翌日行ってみると再び10分ほど待たされた後、「係の人が今日は休んでいるようだから明日来て。」そしてその翌日行ってみると、やはり係の人がいません。

 でもこの日は「明日来い」と言わずに「待っていろ」というので待っていると、10分ほどして係の人が出勤してきました。始業時間を1時間ほども過ぎてるんだけどなあ。そして目の前でビザの発行をしてくれましたが、実際の作業にかかった時間は3分ほどでしょうか。この3分のための二日間をタンザニア人ならどう考えるのか興味深い所です。

 さて今度は小包の話です。タンザニアでは郵便は私書箱あてで、個人の家への配達は行なわれません。小包は局内に置かれ、通知書だけが私書箱に入れられます。僕らは通知書をもって窓口へ行き、税関のチェックを受けなければいけません。

 僕宛ての小包が届いたと言う通知書を受け取ったので、ある日都合をつけて郵便局へ行きました。係の人に通知書を渡し、小包はすぐ出てきましたが、チェックをする税関の人がいません。税関の人がいないと目の前の自分あての小包を開けることもできません。郵便局は土曜日の午前中も開いているのですが、税関は平日しか開いておらず、仕事がありますから、平日の昼間に郵便局へ来るチャンスも当然限られています。

 仕方が無いので待つことにしましたが、係のおばちゃんが出てくるのに40分かかりました。我ながら良く待つものだと感心しちゃいます。一応おばちゃんは「待たせてごめんね。他に仕事があったから。」と言ってくれました。このおばちゃん、いつも愛想は良いのですが、税金だけはしっかり計算して取ります。変な所で仕事熱心なんですねえ。でもこの間、以前留学していたメルボルン大学で僕の修士論文が出版物になり、送られてきた のですが、その時「僕の本が来たんだよ。」と話すと、「自分の本に税金払うのも変な話だから、500シル(約100円)でいいわ。」とおまけしてくれました。

 話がそれました。この他にも最近電話がよく故障するので電話局に修理を申込みに行っても窓口に人がいなかったりとか、そんなことはしょっちゅうあります。こう書いてしまうとタンザニア人は余程仕事をサボってばかりいるのか、と思われてしまいますが、必ずしもそうではありません(そうである人も多いですが)。

 日本と一番違うのは、多くの場所に担当者が一人しかいない、ということです。日本なら特にお客さんと接する窓口には、直接の担当者がいなくても、誰かを配置して、対応ができるようにします。ところがタンザニアの場合、各人の職務権限が明確に決まり過ぎていて、同じ職場の人だからと言って、他の人の仕事の代理を務めることはできないようです。このため担当者が何らかの理由で席を外したり、病気になったりしたら、その間仕事は全く進まず、その人しか受付けられない業務はすべて止まってしまいます。

 電話の故障なら、どうせ頼んでも修理にいつ来るのかわかりませんからちょっとくらい受付が遅くなっても大差ありません。でも滞在ビザとかになると、期限の問題もあるし(切れると不法滞在になる)、パスポートをその間税関に預けなくてはいけませんから困って しまいます。「何でこれを不思議に思わないのかなあ?」と僕らは考えるのですが、どうもそうした発想は無いようです。

 民間の会社でも同じような所があり、車輌保険の更新をしに行ったら担当者がいなくて30分待たされたりとか、警備会社に契約書の話で行ったらマネージャーがいなくて、契約書が出来ているはずなのに受け取れ無かったりとかありました。小売りの店などはさすがにかなりきびきびしているのですが、それ以外はちょっと問題があります。

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