Vol.10
28 February 1997

ドキュメント・出廷

 2月24日、突然裁判所からの呼び出しを受けました。無論読者の皆さんご存知のように僕は悪いことができるような人間ではありません?!から、裁かれるためではありません。第6号で書いた交通事故の裁判が始まったのです。被告は事故を起こしたバスの運転手。僕は証人としての出廷です。

 裁判所とはいっても県事務所の一角にある普通の事務室です。まずは話に聞いていた宣誓。「宗教は?」と聞かれたので「クリスチャン」と答えたら、聖書を出されてそれを持って宣誓しました。「仏教徒」と答えておいたら何が出てきたか(般若心経があったりして)、話のネタにそっちにすべきだったかと、あとでちょっと後悔しました。

 証言を行うのですが、なんと検事も弁護士もいません。裁判官が僕に英語で質問し、僕が答えるとそれが逐一スワヒリ語に訳されて伝えられます。反対尋問はなんと被告のドライバー自らが行うのですから驚いてしまいました。どうもドライバーは、「自分がぶつかって行ったのではなく、タンクローリーがぶつかってきた」、と主張しているらしいのですが、無論嘘八百です。

 「あなたはバスとタンクローリーがぶつかるところを見ましたか?」

 「見ました。」

 「大きなタンクローリーの後ろにいたのだから、見えないのではないですか?」

 「100m離れていたから見えました。」

 「…」

 この後現場に出かけ、やりとりが続きましたが、一緒にいた人の話では「ドライバーはもう逃げられないだろう」だそうです。人を牢屋に送るために証言するのはあまり愉快ではありませんが、事故を起こして何人も殺しているのですから当然でしょう。でも証言が終わった時に、にこにこと笑いながら握手を求めてきたドライバーも、本当は善人なんだろうなとも思っています。

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