Vol.10
28 February 1997

カレンダー狂想曲

 年が変るとプロジェクトに毎年持ち上がる騒ぎ、それがカレンダー騒動です。去年は日本から持って来たカレンダーが盗まれた話を書きましたが、今回はプロジェクトが広報用に作っているカレンダーの話です。

 プロジェクトでは毎年「木を植えよう」というメッセージを印刷したカレンダーを作って配布しています。他の多くのプロジェクトではお偉方にしか配らないのに比べ、僕のいるプロジェクトでは農民層にもかなり配るので人気があります。

 さて今回の騒動の元は、予算の都合上、昨年まで3千部作っていたカレンダーを、千部に減らしたことにあります。3千部もあると余裕がありますから、タンザニア人スタッフなどが友人知人にまで配って結構いい顔をしていたようです。そして去年と同じつもりで友人知人に安請け合いしていたところ、割り当てが大幅に減り、中にはプロジェクトのスタッフに渡す分を横取りして約束していた人にあげてしまった者まで出てきたのです。

 去年も書きましたが、タンザニアで私企業からタダでカレンダーを貰えるような人はほとんどいません。家の中の装飾も乏しいですから、カレンダーはその年が終わってもはがされることなく、ポスター代わりの装飾として、延々と残っています。そしてサメでは、多くの人にとってはプロジェクトのカレンダーを手にいれられるかどうかが、今年一年カレンダーを見て暮らせるかどうかの分かれ目になっているのです。

 3千部が千部になったのですから、去年貰った人の内2千人は今年は貰えないことになります。去年までは誰に配るか計画されていなかったようですが、今年は戦略的に配ることにして、詳細な配布計画を作りました。案の定配ってみると「貰っていない」の大合唱です。中には手紙で「うちは何人だから何部持って来てくれ」と要求してくるケースもあり、貰えるのが当然という風潮がはびこっています。これも過去のばらまき行政?のつけですが、直接オフィスまで「カレンダーをくれ」と言いに来る人続出で、ついにドアに「カレンダー品切れ。仕事の邪魔をするな!」というスワヒリ語の張り紙が出されました。

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