Vol.8
15 December 1997

山火事

 11月の中頃、プロジェクトが支援している山の上の村の造林地で山火事が発生しました。原因は不明ですが、数ヘクタールが焼けてしまいました。その状況を調べるために現場へ行ってみたのですが、もともと裸地に近い状態で植生が貧弱だったせいか、火の走りが速かったようで、葉は枯れたものの生きている木がかなり多く、ほっとしました。

彼らがワラビ・ボーイズです。

 さて実はこの村で火事が起きたことを密かに喜んでいる人物がプロジェクト内部にいるのです!無論その人物が火をつけた証拠はありません。そしてその人物は日本人なのです。なぜか?

 日本などでもそうだと思いますが、山火事の跡地にはワラビが生えるのです。火事にあった場所は元々ワラビが多く、仕事で行ったついでに時々摘んで来たりしていたのです。山火事の調査に行った時も予想通りあるはあるは。太くて柔らかいワラビがそこら中一面に出ています。

 土地の子供たちも日本人がワラビを採るのを知っていて、火事の跡を調べている間にも集めておいて「はい」とくれました。中にはちょっと大きくなりすぎたものも混じっていましたが、まあそれはご愛敬です。

 土地の人達はふんだんにあるワラビを食べる習慣を持っていませんでしたが、日本人があくの抜きかたを教えたところ、食べてみて「こんなにうまいとは知らなかった」と言っています。新しい食習慣として広まるのではないでしょうか。昔の日本人はワラビの根っこまで澱粉を取って食べていたわけですが、考えてみれば多分一種の救荒食、かつては日本の方がアフリカよりも食糧事情が不安定だったのだろうと推測されます。

 ワラビというのはかなりあちらこちらにあるようで、オーストラリアでも見かけましたし、インドネシアのカリマンタンにもありました。でもあくがあるせいか、食べているところはほとんどないようです。

 オーストラリアでは農学部の先生が一緒だったので「これが食べられるこれを知っていますか?」と聞いたところ、「そんなはずはない。これは牛などにとっても毒だよ。」人間の話がいきなり牛の話になってしまうところがさすがにオーストラリアですが、どうやらワラビはまったく知られていません。

 ところがインドネシアのカリマンタンでワラビを見つけた時、地元の人にも聞いていました。すると「ああ、食べるよ」とのこと。アジアでは知られているのかと思いよく聞いてみると、「仕事で駐在していた日本人に教わった。」やっぱり日本はワラビを食べなきゃいけないほど貧しかったんでしょうね。

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