Vol.7
10 May 1997

公道レース

 日本にも暴走族や、首都高の環状線でレースをしている連中がいますが、タンザニアにも公道上でレースをしている連中がいます。「タンザニアでそんなにスポーツカーが普及しているのかなあ?」と思われるでしょうが、レースをしているのはスポーツカーではなく、なんとバスです。

 各バス会社はいかに短時間で目的地に着けるかを競い、激しいレースを展開するのです。大型バス同士がほとんど平行して走っているなどという光景も珍しくありません。映画ででも見れば迫力あるシーンですが、実物に出くわしたら迫力を超えて恐怖です。タンザニアではバスの事故は日常茶飯事。車で長距離を走ると、ひっくり返ったバスを見ないことが珍しいくらいです。こうしたバス会社の問題が実は先日の事故の背景にあるのです。

 数年前まではタンザニアの道路状況は世界でも最悪の部類で、とても高速で走れるような代物ではありませんでした。しかしここ数年民主化・自由経済化が進んだのと平行して先進国の援助が集中して入り、道路の状況が格段によくなりました。信号もなく、交通量も少ない道路ですからスピードを出そうと思えば高速道路並みに出すことが可能となりました。

 ところが、そこは相変わらず人も牛もヤギも通っている道路であり、片側一車線で中央分離帯どころかセンターラインすら無いところが多いくらいです。こんな所で大型バスが暴走するのですから危険極まりありません。

 しかしどうやらバス会社だけの問題ではなく、利用しているタンザニア人も、スピードの速いバス会社を高く評価する傾向があるようです。安全を二の次にしたバスの運行、自殺行為にしか見えないし、事実バスの起こす事故は日常茶飯事です。「バスを見たら気違いと思え」がタンザニアの道路上での常識ですが、気違いが多すぎて困ってしまいます。

 最近タンザニア政府も見かねたのか、すべてのバスにはスピード・ガバナーという最高速度を制限する装置を付けること、という御触れを出しました。機械の問題ではないと思うのですが、さてさてどれほど効果があがることでしょうか。

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