Vol.7
10 May 1997

マエンベ・ンゴンゴ

 またまたわけのわからないタイトル、かな。マエンベ・ンゴンゴというのは家の庭の木の一本になっている実のことです。マエンベだけだとマンゴーの実のこと(マンゴーの木はムエンベ)ですが、この実はマンゴーの仲間ではなく、見た目はどちらかといえばキウイ・フルーツを一回り大きくしたような形です。触ってみるとかなり固いのです。そして熟した実のにおいはパッション・フルーツによく似ています。でもパッション・フルーツのにおいを知っている人は少ないかな。

 ベランダのテーブルの上に数日前から実が置いてあったのには気づいていましたが、フェリシタおばさんにすすめられるまでそれが食用だとは知りませんでした。味はマエンベと言う名前が付いているのもうなづける、青いマンゴーに似た味です。知らない人に青いマンゴーがどんな味かと聞かれるとまた困ってしまいますが、まあちょっと癖があって青臭くて酸味が強い未熟な青リンゴ!?とでも思ってください。

maembe ngongo マエンベ・ンゴンゴの実にもマンゴー同様中央に大きな種がありますが、種は周りになんだか固い毛が生えていて、ランブータンの実のような形をしています。えっ?ランブータンを知らない?うーん。

 フェリスタおばさんが知っているくらいだからかなり一般的なのかと思い、プロジェクトで英語名か学名を知らないか聞いてみました。するとマエンベ・ンゴンゴ自体を知っている人がほとんどいません。プロジェクトのマネージャーは、ババ・マトゥンダさんといい、冗談抜きにして直訳すると「果物のお父さん」という意味ですが、修士号を持っている経験豊かなこの果物のお父さんですらマエンベ・ンゴンゴは知りませんでした。

 かろうじて二人知っている人がいましたが、これがタンザニアに土着の植物かどうかでは意見が分かれました。一人はブッシュの中に生えているのを見た、と言っていますし、わざわざ導入するほど価値のある果物とも思えないので、多分土着のものなのではないかと最初思いました。ところがプロジェクトのドライバーに聞いたところ、ケニアのモンバサでは市場で「インドのマンゴー」という名で売っていて、インドで青いマンゴーを食べる時のように塩と唐辛子の粉を混ぜたものをつけて食べるそうです。そうするとどうやらインドからの導入種の様です。

 またプロジェクトのスタッフの一人が言うには「マエンベ・ンゴンゴは妊婦や子供の食べ物」だそうです。するとどうやら妊婦が酸っぱいものを好んで食べるというのは日本とタンザニア(世界?)で共通のようです。

 海外あちこちに長く住んでいるといると、いろいろな珍しいものを口にする機会があります。果物も同様で、マエンベ・ンゴンゴなどはタンザニア人でも知らない人が多い珍菓?なわけです。かつでホンジュラスの僕が住んでいた地域にはウーバとマンサーナと呼ばれている果物がありました。それぞれスペイン語で本来はブドウとリンゴの意味ですが、僕が食べていたものは実物とは全く違った果物で、強いて色や形が似ているとすればブドウやリンゴかな、といった程度のものでした。多分商品価値も無い土着の果物で、特別な名前も元々無かったのでしょう。

 誰に聞いてもンゴンゴの意味を知らなかったので、マエンベ・ンゴンゴも同様に強いて言えばマンゴーに近い味なのでついた、ただの名前かとも思いました。ところがやはり前述のドライバーが「ンゴンゴはヤシの一種から取れる繊維の名前」と教えてくれました。どうやら種にはえている固い毛の繊維質がンゴンゴに似ているから付いた名前、というのが正解のようです。大卒者何人に聞いてもわからなかったのに、このマサイ族出身のドライバー、なかなか恐るべき人物です。

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