Vol.5
17 August 1996

アルーシャ国立公園

 アルーシャ国立公園のことは以前ちょっとだけ書きました。僕の家から一番近い国立公園はキリマンジャロ山ですが、いわゆるサファリ・パーク(日本のを想像しないように!)ではアリューシャが一番近く、車で走って一時間半弱です。今までにも数回行きましたが、先日初めて一人で行ってきました。ライオンやサイがいるわけでもなく、サイズも小さいし、観光客では余程時間に余裕のある人しか訪れません。でもその分静けさが楽しめるわけで、この日もついに他の車は一台見掛けただけでした。

 アリューシャ国立公園の一体はキリマンジャロ山から連なる火山地帯で、西端にはメルー山という火山が、中央部には小さな湖が点在する複雑な地形が、東にはンゴロンゴロを小さくしたようなカルデラがあります。メルー山は磐梯山のように爆裂火口を持つ火山ですが、標高が4566mですから格がちょっと違います。裾野には野生動物がうようよしているので、銃を持ったガイドを頼まないと登れません。

クレーターを見下ろす

 今回行ったのは東のカルデラです。名前は Ngurdoto Crater といいます。ンゴロンゴロより小さいですが、それでも直径は1km 近くあります。ここは中に下りることが禁止されており、クレーターの縁から中を見下ろすわけです。

ヨコバイ クレーターの中は草食獣の天国で、バッファローは常にいるし、他には小型のカモシカ類も必ずいます。今回は象が7頭ほどいました。一部に水が溜まり、緑がとても美しいところです。公園内は原則として車から降りるのが禁止ですが、クレーターの縁の何ヶ所かに駐車のスペースと、中を見下ろすためのベンチなどが作ってあります。

 このNgrudoto Crater も一見に値すると思いますが、僕が気に入っているのはここを覆う森林です。このあたりはいわゆる熱帯高地と呼ばれるところで、雨量が多く、立派な森林があります。普段仕事で見慣れたサバンナ林とは違い、大きな木に苔やサルオガゼのような着生植物などが多く付いています。このちょっと湿った植生を写真に撮ろうというわけです。

シロクロコロブス 写真を撮りたい時は一人で来るのが一番いいのです。何しろ何の変哲もない木に向かい、三脚を構えて時間をかけているなんて、興味の無い人には耐えられないでしょうから。

 今回も直径1m以上はある木の根元付近に着生した、小さな花にマクロ・レンズを向けていました。他には誰もいませんが、森は常に静寂とは程遠く、風の音や鳥の声、虫の羽音でみちています。

 この時もざわざわいう木の音で見上げてみると、僕の撮影している木の上に、シロクロコロブスという美しい大型の猿がいました。一度このふさふさした白く長い尾を持つ猿の群れが、木々の樹幹を枝から枝へと移り渡る様を見れば、誰もが魅了されると思います。でも常に森の中におり、開けたところには出て来ないので、写真を撮るのが難しい猿です。

Turako 大きな声で鳴き交わしながら飛ぶ鳥がいるので見上げると、大きなサイチョウの群れでした。そしてちょっと離れた木の上から聞こえてくるお世辞にも奇麗とは言えない別の声、どこかで聞いた記憶が・・・と思っていると、一瞬モスグリーンの中に鮮やかな赤色を見せる鳥が視界をかすめました。

 トゥラコです。日本語でエボシドリと呼ばれるやはり森林性の美しい鳥でした。ケニアでも何度か見かけましたが、写真を撮るのが非常に難しい鳥です。その美しさと言い、僕には一種憧れの鳥です。

蝶 目を小動物に転じると、そこには何種類いるのかわからない蝶たち、面白い模様の小さなカエル、カニのような横長のクモなど、見飽きる事がありません。

 アリューシャ国立公園の話はこちらにも

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