Vol.4
15 June 1996

クンビクンビ ハネアリ

クンビクンビ クンビクンビとは何か?と言うのをクイズの問題にしようかとも思いましたが、読者の少なくとも数人はアフリカ経験があるし、さらに数人はまだアフリカにいるので止めました。

 クンビクンビというのはある種の白蟻の羽蟻、つまり王様蟻と女王蟻のことです。雨季の最中、こいつらがペアの相手を求めて一斉にシロアリの蟻塚から出て来ます。その数は無数といってもいいくらいです。左の写真に写っているのは白いものがクンビクンビの羽です。

 クンビクンビは地上に降りるとしばらくして羽を落とす習性があります。所々にいる茶色いものがクンビクンビです。二匹縦に繋がっているものは相手を見つけたオスとメスです。

クンビクンビをくわえるヤモリ 繁殖のためだけの特別の個体ですから、高タンパク・高脂肪。栄養たっぷりで、鳥やトカゲやカエルや猫なども大喜びです。トカゲが巣穴から出てくるクンビクンビを回転寿司のように目の前に出てくるのを待って片っ端から食べているのを見たこともありますし、家の窓では明かりに集まってきたクンビクンビを狙ってヤモリたちの大饗宴となります。

 このあいだはうちにいる犬までが食べているのを見かけました。まあこいつはバッタでも食べちゃうんで、個人的に昆虫が好きなのかもしれませんが。

 そしてキリマンジャロの周囲に住む人たち、チャガ族もクンビクンビが大好きで、うちの庭師のジョセフも夜街灯に集まったのを一生懸命集めていました。炒めたり煎ったりして塩をかけて食べるそうです。

 空缶のような容器に熱心にクンビクンビをつまんでは入れているので覗いてみると、容器の中には水が入れてありました。這いずりまわるクンビクンビが容器の縁に登って逃げたりしないための工夫でしょう。

 食べたことのある日本人の話では、かなりいけるそうです。まあ日本人もちょっと前までは普通にイナゴを食べていたし、昆虫は元々エビやカニと同じ節足動物だから驚くには当たらないのでしょう。

白蟻の巣 食用になる白蟻は大きな種類で、蟻塚も写真などでお馴染み、数メートルはあるものも普通です(左の写真がそれです)。女王蟻は巣の中で卵を産み始めると腹の部分が伸びて体長10cm以上になり、これを食べた人の話では「エビ味のタラコ」だそうです。僕は意外と下手物食いの趣味はないので、あまり食べたいと思いません。

 白蟻というのは植えた木を齧ってしまう憎い奴と思われていますが、西アフリカでは木を植える時に白蟻がやって来るように周りに草などを敷くのだそうです。乾燥地にはミミズがおらず、白蟻が有機物の分解や、土壌の改良に重要な役割を果たしている訳で、白蟻がやって来ると地中に穴を掘り、水や空気が通り易くなり、木の成長が促進されるのだそうです。無論白蟻が好まない樹種にしか使えない手でしょうが。

 ケニアにいた時、木を守る手段として近くの蟻塚を壊せと指導していたのですが、蟻塚を作っている種類は生きている木を齧らないそうで(なんと蟻塚の中でキノコを栽培して食べている!)、嘘を教えてしまいました。

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