Vol.20
25 June 1998

ネズミ退治

 ある朝職場でのこと。「Mr. Noda、印刷機が動かない。」

 コピー機やらコンピュータやら印刷機やら、機械類が動かなくなると僕らはすぐ修理工に変身です。「またいつもの紙詰まりだろう。」と、サイドの扉を開け、中を見てみると、あるはずの紙はありません。「???。じゃあどうして動かないんだろう?」とそこで視界に入ったのが、床に落ちたコピー用紙の屑。

 悪い予感がしました。装置の一部を持ち上げてみると、電源コードの切れ端があります。もう間違いありません。ドライバーを使って、外側のカバーを全部はずしてみるとそこにあったのは、コピー用紙を裂いて作ったお椀型の巣でした。何とネズミが印刷機の中に巣をかけていたのです。ネズミは自分が通路にしている場所すべての電気コードをかみ切り、印刷機の中は見るも無残なありさまになっていました。

 この他にも「最近無線の調子が悪いなあ」と思っていたらアンテナ線がやはりネズミにかみ切られていたり、大被害です。どうやらエルニーニョの雨によって餌が増えたためにネズミが大発生しているようです。とりあえず殺鼠剤を撒いたところ、数日後に二匹がオフィスの中で死んでいました。

 無論ネズミ君が悪さをするのは仕事場だけではありません。僕の家にも頻繁に出没して、バナナを齧ったりしています。ドブネズミのように大きなものではなく、ハツカネズミに近い小さな野ネズミですから、家に侵入できる入り口を全部ふさぐことは事実上不可能です。

 「まあバナナくらい」と大目に見ていたら、何とふてぶてしい奴がいて、台所の流しの下に住み着いてしまいました。こうなるとバナナの被害は毎晩です。ネズミ君はなぜか知らないけど、前の晩の食べかけバナナには目もくれず、毎晩新しいバナナを齧ります。これではたまりません。ということで、ネズミ捕り大作戦を敢行しました。

 まずは手持ちの資材で何とかならないかと、ガムテープを並べ、その真ん中にバナナを置きました。べったりとくっついてくれると思いきや、しっかりバナナだけ取られてしまい、ネズミほいほい作戦は見事に失敗。

 しかたなく市場へ行って鼠捕りを買ってきました。日本式のではなく、トムとジェリーに出てくる、ぱちんと挟むやつです。これにバナナを乗っけて試しましたがまた失敗。タンザニア人に相談すると「肉を使え」とのこと。肉を使ってみるとまた失敗。餌だけ取られてしまいます。どうもネズミの体重が軽すぎて、罠が落ちないようです。

 それではと、今度は罠の改良です。油を塗ったりと工夫を凝らしましたが、途中で2度も指をバチン!とやられてしまいました。かなり痛いですが、人間が怪我をするほど強力ではないことがわかりました。そして改良した罠に、今度は奮発してチキンをつけ、ネズミの住む流しの前に置いておきました。

 さてその夜。居間で本を読んでいると「ガシャーン!」という大きな音。駆けつけてみると、ネズミが一匹首を挟まれて、おしっこをちびりながら、足をぴくぴくさせていました。あまり見ていて気持ちのいいものではありません。動かなくなってくるのを見ていると「やったー!」というよりは罪悪感です。

ネズミ さて鼠捕り作戦が成功して数週間後。またまたバナナに被害が出ました。今回は毎晩外部から侵入してくるようです。その内罠をかけようと思っていた矢先、何を思ったのかネズミが一匹夜僕がいる書斎に入って来ました。本箱の下に潜り込んだところを写真に撮りましたが、写真に撮られるネズミなんてかなりどんくさいと思うのですが。

 このネズミ、追いつめてサンダルでポンと叩き、死んだのか気絶していたのかは知りませんが、しっぽをつまんで外へ放り出しました。

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