Vol. 2
25 March 1996

カマキリの神秘

 プロジェクトの事務所は、町から離れたサバンナの中にあります。夜間には安全のため、太陽電池を使った街灯が点けてあります。雨季には朝になると、他に光の全くない周囲の薮から飛んできた虫達がびっしりです。一番多いのは蛾で、大きなものから小さなものまで、色とりどり、姿形では一見なんだかわからないようなものもいます。カミキリムシやゴミムシも多く、マニアが来たら興奮してしまうのではないかと思います。

これもカマキリ その中に時折混じるのがカマキリです。オーソドックスなものもいますが、中にはけったいなものもいます。自然好きな人は「ははあ、カマキリの擬態のことを書くのだな」と悟られたでしょう。花や木の葉に擬態するカマキリは有名で、写真も時々雑誌などで見かけます。僕もケニアでハナカマキリを見たことがありますが、なかなか美しいものでした。左の写真もそうしたカマキリの一種で、木の葉に化けているのでしょう。

 でもサメで見たカマキリほど僕を驚かせはしませんでした。筆頭は勝手にバニー・カマキリと呼んでいる触覚がバニーちゃんの耳のように長いやつです。でもこれはその外の部分は普通のカマキリと変わりません。

 実は昆虫に擬態するカマキリの存在を僕は知りませんでした。サメで見つけたのは他の昆虫に姿も、また動きまでそっくりになっているカマキリなのです。

 最初に見つけたのはゴキブリでした。一見チャバネゴキブリのように楕円形で薄く、ちょこまかと走りまわっています。触覚の動きもゴキブリそのもので、多くいる森林性のゴキブリかと思いました。でも頭がやけに三角です。不思議に思ってよく見ると、鎌がありました。

 次に見つけたのは極めつけです。体はくっきりと三つにくびれ、鮮やかな黄色と黒の横縞があります。背中にはまっすぐ伸びた透明な羽が4枚、少し開き気味に付いています。跳ぶ時は羽を震わせ足を下げます。そう、どう見ても蜂なのです。しかしよく胸の部分を観察すると、そこにはやはり一対の鎌が付いています。むんずと掴むと、お尻の針で刺さず、鎌で抵抗するところはやはりカマキリです。

 あんまり凄いので家に持って帰って庭でマクロ撮影をしましたが、芸術写真をものにしようとあれこれポーズに注文をつけていたら飛んでいってしまい、撮影は失敗してしまいました。

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