Vol. 1
5 February 1996

トウガラシはなぜピリピリ辛いか?


我が家のピリピリ

 このコラムのタイトルを見て多少スワヒリ語を知っている人は、「ああ駄洒落だな。」と思ったかもしれません。

 なぜか?トウガラシをスワヒリ語ではピリピリと呼ぶからです。でもこれだけでは大した話になりません。僕はここで日本語のピリピリ(辛い事)とスワヒリ語のピリピリ(トウガラシ)は、実は同語源ではなかろうかという仮説を発表しようと思います。

 まずトウガラシの起源です。今では熱帯各地や日本のお隣の朝鮮半島でも多く用いられるトウガラシですが、原産はアメリカ大陸だったと思います。

 アメリカ大陸と言えば最初に征服に乗り出したヨーロッパの国はポルトガル、スペインでした。そして初めて希望峰を周り込んでインド洋に入ってきたのもバスコ・ダ・ガマ率いるポルトガル船でした。

 ということは、アジア一帯の激辛文化はそれほど歴史の古いものではなく、ポルトガルがアジアに進出して以降のものだとわかります。もちろん東アフリカに今のピリピリを持ち込んだのも彼らでしょう。日本でトウガラシを南蛮と呼ぶ地域があるところを見れば、日本へもポルトガルかスペインの船が持ってきたと見ることができます。また余談ですが、朝鮮半島へのトウガラシの伝播は、日本から豊臣秀吉の軍が遠征した時だという説もあります。

 では四百年前の光景を思い浮かべてください。日本に交易にやってきたポルトガル人がギヤマンの壜に入ったヴィーニョ・ティント(赤葡萄酒)の次に取り出したのは、乾燥した赤いトウガラシ。ポルトガル人はしきりに「ピリピリ」と言い、食べてみろと勧めます。それを試してみた堺の商人、辛さに目をまわし、「うーん、ピリピリ、辛い!」。

 ピリピリは日本語の語感だとチクチクみたいに状態を表す言葉に聞こえるため、商人はその辛さがピリピリだと思い込みましたとさ。この仮説を全くでたらめだと思う人はポルトガル語でトウガラシを何と呼ぶか調べて見てください。さらに真実が知りたい人はNHKクイズ日本人の質問あてにお葉書をどうぞ。

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